鬱(うつ)漫画おすすめ16選!読むと心がえぐられる

鬱漫画と聞くと、抵抗を感じる人もいるでしょうか。読み進めるほどにどんどん気分が沈んでいったり、突然の衝撃展開がトラウマ級だったり、中には読後に落ち込んだ気持ちを立ち直らせるのに数日かかったり…なんていう作品もあるかもしれません。

ここでは、それでも結末が気になって仕方なくなるストーリー展開の秀逸な作品や、多くの人たちの心を揺さぶってきた王道作品など、鬱漫画、トラウマ漫画と呼ばれる名作の中からおすすめの16作品をご紹介いたします。

闇金ウシジマくん

闇金ウシジマくん

「カウカウファイナンス」は10日5割(トゴ)の暴利闇金融。その経営者である丑嶋のもとには、高い金利にもかかわらず、客がひっきりなしに訪れる。

毎朝9時には「奴隷くん」と呼ばれるパチンコ依存症の主婦たちが金を借りにやってくる。主婦は闇金業者の上客だと丑嶋は言う。そうして彼女たちは今日も丑嶋のもとを訪れる――。

闇金経営者の丑嶋と従業員たちの仕事ぶりや日常、闇金に訪れる客や金に群がるさまざまな人物たちの人間模様を描いた裏社会ヒューマンサスペンス。読んでいるだけでメンタルが削られると感じるほど、陰惨で救いのないエピソードが多く、鬱漫画としても広く知られている作品です。

2011年「第56回小学館漫画賞」一般向け部門を受賞し、累計発行部数は2100万部(2022年3月時点)を突破しています。テレビドラマ化、実写映画化作品も話題をさらった人気漫画です。

インゴシマ

インゴシマ

都立吉ノ宮高校の2年生は客船に揺られ、修学旅行先の八丈島へと向かっていた。ところが、客船は突如嵐に遭遇。大波にさらわれて難破し、ある島に流れ着く。そこは海図にも載っていない、倫理観を持たない野蛮な「シマビト」が棲む島だった。

シマビトは圧倒的な力を持って流れ着いた一行を次々と捕獲していく。少年少女たちはこの地獄から逃れることができるのか――!?

秩序の崩壊した島に流れ着いた人々が、野蛮な島民たちの暴力から逃れ、島からの脱出を試みるサバイバルサスペンス。捕まった漂流者たちは惨殺されたり、奴隷や生贄に選別され自由を奪われたりするなどグロテスクなシーンが多く見られます。

また、過激なエッチなシーンが多いことでも知られる作品ですが、拘束されて島民たちの性奴隷になり犯されるという残酷な場面が多く、人によっては嫌悪感を抱くかもしれません。

四丁目の夕日

四丁目の夕日

進学校に通う高校3年生のたけしは有名大学合格を目指していたが、ある日、暴走族に襲われる。同じ日、自宅に帰ると母が大怪我をして救急車で運ばれてしまう。

そして母の治療費を稼ぐために仕事を増やした父もまた不幸に見舞われる。あとからあとから襲い来る不幸と救いのない人生に、たけしの心は次第に壊れ始める――。

格差や貧困、家族や友情の崩壊など、次から次へと不幸に見舞われる主人公の悲劇を、過激なスプラッター表現を織り交ぜて描いた作品。人の心の暗い部分を浮き彫りにし、読み手の心を深くえぐります。

1985年から1986年にかけて『月刊漫画ガロ』誌上で発表された衝撃作。著者・山野一氏の代表作にして初の連載作品でもあります。80年代のサブカルコミックの代表作でもあり、鬱漫画の王道として広く知られ、今なお多くの世代に読まれ続ける名作です。

血の轍

血の轍

中学二年生の長部静一母・静子からの愛情をたっぷり受けて育った。それはごく普通の親子関係のようにみえたが、内実は過保護、過干渉といえるほどのものであった。母に守られ、平穏な日々を送ってきた静一。

しかし夏休みのある日、穏やかな日常は崩壊する。親戚たちと一緒に行った山登りで、静子は目を疑うような恐ろしい行動をとって――。

『漂流ネットカフェ』、『惡の華』、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』『ハピネス』などで知られる押見修造氏が「毒親」をテーマに描いた渾身作。静子の毒親っぷりにえもいわれぬ恐怖を感じますが、さすが屈指のストーリーテラー、先をどんどん読み進めたくなります。

とはいえ描かれている静一の絶望感は深く、読み手も暗い気持ちに引っ張られやすいかと思うので心して読んでいただきたい作品。累計部数は200万部(2022年9月時点)を突破する人気作です。

ぼくらのひかりクラブ

ぼくらのひかりクラブ

工業地帯が広がる螢光町の片隅にある廃工場。小学4年生のタミヤ、ダフ、カネダはここに秘密基地「光クラブ」を作り、楽しく遊んでいた。

3人が小学5年生になったある日、「光クラブ」に転校生の常川が現れる。常川はクラブの一員になり、その後もメンバーは増えていく。子どもたちの無邪気な遊び場は、なぜ残虐な物語の舞台へと変わったのか――。

漫画界の鬼才・古屋兎丸が、80年代に人気を博した劇団「東京グランギニョル」の舞台を原作として描いた傑作『ライチ光クラブ』。本作はその前日譚で、秘密基地「光クラブ」に集まった少年たちの出会いや彼らに秘められた過去が描かれます。耽美的で退廃的な世界観に魅せられる作品。

『ライチ☆光クラブ』刊行15周年を記念して発売された古屋兎丸氏×和山やま氏によるスペシャルコラボレーション本『ライチ☆光クラブ コラボレーション』も話題です。

おやすみプンプン

おやすみプンプン

プンプンは転校生の田中愛子に一目惚れをした。その日、学校からの帰り道、プンプンと愛子は作文の宿題で出された「将来の夢」について話をする

プンプンパパからもらった天体望遠鏡で夜空をのぞいたプンプンは、「僕は宇宙を研究する人になろう」と誓う。その翌朝、プンプンがリビングに行くと、プンプンママが倒れていて――!?

『ソラニン』、『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の浅野いにお氏が描く日常系ヒューマンドラマ。主人公の小学生・プンプンの半生を描いた作品です。プンプンやその親族だけがヒヨコのような姿で描かれているのが特徴で、メッセージ性が強く打ち出され、登場人物たちの心理描写も丁寧で惹きつけられます。

序盤から鬱屈とした雰囲気がじりじりと迫ってくる気配はあるものの、読者の心を揺さぶる衝撃的な鬱展開があり、鬱漫画の名作としても知られている人気作品です。

僕たちがやりました

僕たちがやりました

凡下高校に通うトビオ、マル、伊佐美、そして高校のOBで金持ちのパイセンは4人でつるみ、毎日楽しく過ごしていた。しかしある日、マルが近隣の矢波高校の不良にボコボコにされてしまう。

その仕返しに、4人はパイセンの財力で手製の爆弾を作り、矢波高校の校舎に仕掛ける。不良たちを少し驚かせるつもりだったが、死傷者が出るほどの大きな爆発が起こり、取り返しのつかない事態になってしまい――!?

事件を起こし、人生が激変していく若者たちの青春逃亡録。少年犯罪をテーマとした漫画で、若者たちの未熟さや稚拙さ、少年事件に科せられる罪の重さ、人間の本質といったことなどを、コメディタッチのシーンを織り交ぜながらドラマチックかつシリアスに描きます。

罪を償うとはどういうことか、罪を犯した少年たちに未来はあるのか――。重い問いを読者に突きつける作品。テレビドラマ化もされています。

ヒミズ

ヒミズ

中学3年生の住田祐一は母親と2人、川沿いに構えた簡素なコンテナハウスに暮らし、そこで貸しボート屋を営み、細々と生計を立てていた。自分にしか見えない“バケモノ”の存在に悩んでいるが、学校に通い、仲のよい友人もいる。貧しいながらも平穏な日々を送っていた。

ところがある日、母親が恋人の男と駆け落ちしてしまう。ひとり残された住田の日常は少しずつ崩れ始めていく――。

『行け!稲中卓球部』、『僕といっしょ』、『シガテラ』、『ヒメアノ?ル』など、数々の代表作で知られる古谷実氏が描く青春残酷物語。苛烈な境遇にあり、普通に憧れる少年の人生にもがき苦しむ姿を、人の内面の暗い部分にフォーカスし、シリアスに描きます。

リアルな人間描写で表現される圧倒的な絶望感に魂が揺さぶられる作品。園子温監督によって実写映画化された作品も話題を集めました。

善悪の屑

善悪の屑

古書店を営む一方、復讐代行を担うカモとトラのもとに、依頼人の女性がやって来る。彼女はかつて、宅配業者を装って自宅に押し入った男に息子を殺され、強姦されたという。

当時未成年だった犯人は逮捕されたものの大した罪に問われずに出所した。その男への復讐代行を依頼するが――。

犯した罪を反省せず、十分な裁きを受けないまま出所した凶悪犯たちに対して復讐の代行をするカモとトラ。凄惨な事件とその復讐代行人の姿を描くクライムサスペンスです。本作に登場する事件は実際に起こった事件をもとにしているとも言われています。

犯罪者たちに拷問を加えるなどグロテスクなシーンも多く、読者に「正義」の意味を問いかける作品です。シリーズ累計発行部数は460万部(2021年4月時点)を突破。本作のスピンオフ『園田の歌』、『朝食会』や、第2部として発表されている『外道の歌』も人気です。

カリスマ

カリスマ

優しかった母の顔、美しかった母の顔、それがあの日を境に狂気に変わった――。学校で節分の行事を楽しむ平八郎と生徒たち。そこに平八郎の母が乗り込み、鬼の形相で平八郎を平手打ちし、背教的で不道徳なことをやらせるなと担任教諭を叱責する。

平八郎を強引に連れ帰った母は「お前のためだ」と言って子どもを執拗に叩き、そして“メシア”に祈りを捧げる――。

新堂冬樹氏の同名小説のコミカライズ作品。カルト宗教に入信した人々とその家族に起こる悲劇、そしてカルト宗教の闇を描くヒューマンドラマです。洗脳や人間の醜い欲望、執着心の恐ろしさを痛感させられます。

物語は意外性のある展開をみせていくので比較的読み進めやすいのですが、グロテスクなシーンや性的なシーンがあるため、嫌悪感をもよおしたり、鬱屈とした気持ちになったりする場合があるかもしれません。

外れたみんなの頭のネジ

外れたみんなの頭のネジ

女子高に通う七尾ミサキは、ミサキの暮らす街の人たちが、少しずつ狂っていっていることに気づき始める。しかもそのことには、どうやらミサキしか気づいていないようだった。そんなある日、ミサキの部屋に悪魔のようなものが現れる

狂っているのはミサキのほうなのではないかと悪魔に疑われるが、ミサキではなく周りが狂っているのだと悪魔を信じさせれば、悪魔がみんなを正気に戻す手助けをしてやると言われ、ミサキは悪魔に周囲の奇行や自らの恐怖体験を話していくが――!?

主人公・ミサキが不可思議な出来事や陰謀に巻き込まれるサイコホラー。街に溢れる狂人たちの奇行をホラーエピソードとして紹介しながら、街が狂い始めた謎に迫る物語です。

ポップな絵柄ですが、グロテスクなシーンや陰鬱な雰囲気があり、後味の悪いエピソードも多くあります。「第4回次にくるマンガ大賞」Webマンガ部門にノミネートされた作品です。

なるたる

なるたる

小学6年生の玉依シイナは、夏休みの一週間を祖父母の住む島で過ごすのが恒例になっている。今年も父の友人に飛行機で送ってもらい、島に着くと祖父が出迎えてくれた。到着して早々、絵の宿題に悩んでいたシイナは、昔父が描いたという飛行機や怪獣の絵を見る。

その翌日、シイナは海で溺れかけるが、星の形をした妙な生き物「ホシ丸」に救助される。ホシ丸は竜の子といわれるものの一体で、子どもの意識とつながる能力を持っていて――。

『ぼくらの』『なにかもちがってますか』『のりりん』など代表作の多い鬼頭莫宏氏の作品で、1998年から2003年にかけて発表されたSF漫画です。鬱展開の作品を描くことでも知られている鬼頭莫宏氏ですが、その作品群の中でも本作は一二を争うほどに有名な鬱漫画

いじめや性犯罪などの社会問題についても描かれ、表紙の明るく穏やかなイメージとは打って変わってグロテスクで陰鬱な内容に衝撃を受けるはず。2003年にアニメ化もされています。

さくらの唄

さくらの唄

高校の美術部に所属する市ノ瀬利彦。無気力で鬱屈とした日々を過ごす中、美大進学のため、美術部の顧問にすすめられた画塾に通い始める。その画塾には、偶然にも学校のアイドル・仲村真理がいた。

真理と親しくなった利彦は、同級生たちとともに彼女を主演にした映画を撮り、文化祭での上映を目指す。利彦の青春はついに輝き出すはずだったが――。

『お天気お姉さん』、『バカ姉弟』、『ホワイトアルバム』などで知られる安達哲氏の代表作のひとつ。90年代の初めに発表され、漫画ファンの熱狂的な支持を得た青春漫画の金字塔です。高校3年生の主人公の学校生活と日常が、大人の財力と暴力によって崩壊していく様を描きます。

強姦や金による支配など、主人公の叔父が蛮行の限りをつくし、陰惨なシーンも多く描かれますが、暗く沈みながらもテンポよく物語が転がっていく点も本作の特徴であり、大きな魅力です。

極黒のブリュンヒルデ

極黒のブリュンヒルデ

子どもの頃、思いを寄せていた幼なじみを事故で死なせてしまった村上良太。宇宙人を見つけるという彼女との約束を果たすため、高校では天文部に所属し、事故から10年経ったいまもなお、望遠鏡をのぞき宇宙人を探し続けている。

そんなある日、幼なじみとそっくりの美少女・黒羽寧子が転校してくる。幼なじみ本人なのではと混乱する良太は、心を落ち着かせるために天文台に昇ると、そこに寧子がやってきて――!?

『エルフェンリート』、『ノノノノ』、『パラレルパラダイス』の岡本倫氏が贈る純愛ダークファンタジー。スプラッター、虐待、性的描写などグロテスクで残酷なシーンが多いのも本作の特徴のひとつで、その可愛らしい雰囲気の筆致とのギャップに衝撃を受ける作品です。

2012年から2016年にかけて発表され、2014年にはテレビアニメ化されました。コミックス累計発行部数は170万部(2016年5月時点)を超えています。

さよならハルメギド

さよならハルメギド

1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる――。小学三年生の将太は母子寮で母と2人で暮らしている。両親の離婚の原因は自分にあったと考える将太は、父と母の関係がもとどおりになり、再び3人で暮らしたいと願っていた。そんなある日、ひとりの男性が母と将太の前に現れて――。

20世紀の終わりを舞台に、ノストラダムスの予言のひとつである人類滅亡説を題材にしながら、世界の終わりを信じた最後の世代の人間模様と家族のつながりを描いたヒューマンドラマ。大人の事情と子どもの日常、また主人公を始めとする登場人物たちの心の機微を丁寧に描写した作品です。

大人の都合に振り回される子どもたちの姿はみているだけでつらく、胸が苦しくなります。全3巻の本作。最終巻は物語の後半に鬱屈とした展開が待ち受けていることを予感させるほど、暗い印象の表紙になっています。

魔法少女サイト

魔法少女サイト

中学2年生の朝霧彩は、学校では同級生たちから凄惨ないじめに遭い、家では兄から命を落としかねないほどの理不尽な虐待を受け、地獄のような毎日から逃れるために死にたいと願っていた。

そんなある日、自室のパソコンが「魔法少女サイト」という謎のウェブサイトに突然つながる。翌日学校へ行くと下駄箱の中に「魔法少女サイト」から送られた銃型の魔法のステッキが入っていた。同級生にいじめられた彩はそのステッキを使い――!?

魔法少女が人々を襲うパニックホラー『魔法少女・オブ・ジ・エンド』の佐藤健太郎氏によるダークファンタジー。凄惨な日々を送る少女が不思議なサイトと契約し魔法の力を手に入れたことで、残酷な運命へと巻き込まれていく物語。

人を殺すシーンが多い一方で、少女たちの友情や登場人物たちの内面も丁寧に描かれているため、鬱漫画以外の要素も楽しめる作品です。テレビアニメ化もされた人気作。スピンオフ作品『魔法少女サイトSept』も話題を集めています。

印象深く残る鬱漫画をよむるんで

意外にも、傑作と呼ばれる有名な作品も多い鬱漫画、トラウマ漫画。並々ならぬ熱意が込められた著者の渾身作であったり、人生とは何か、罪とは何かといった重い問いを投げかけられる作品であったりして、読み手の心に印象深く残るのでしょう。鬱展開が苦手な人は少し身構えながらも手に取ってみると、新しい出会いがあるかもしれません。